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Author:土屋正裕
画像は南米コロンビアの首都ボゴタ中心部のボリーバル広場。明星学苑卒。



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コロンビア歴史物語 第11話

アメリカ政府は最新鋭のブラックホーク戦闘ヘリをコロンビア軍に提供し、米軍の教官が対ゲリラ戦の指導に当たった。

コカ栽培地には上空から「グリホサート」という強力な除草剤が撒かれた。ゲリラによる撃墜を恐れ、飛行機は3千メートルという高空から除草剤を撒き散らしたため、除草剤は霧のようになって大気中に広がり、コカだけでなく農民の食べる作物まで枯らした。

除草剤を浴びたバナナは黒く変色し立ち枯れした。さらに除草剤は親水性が高いため、雨水に溶けて地中深くしみ込み、住民の飲料水である地下水を汚染した。

コロンビア南部の農村地帯では健康被害を訴える住民が増え始めた。奇形児の出産率も高くなった。

コロンビア計画は2005年に終了し、これによってアメリカ政府はコロンビアのコカイン産業は大打撃を受けたと宣伝している。だが、麻薬取締局(DEA)は「計画の終了後も米国内に流れ込むコカインの量や質、価格に大きな変化はない」と発表している。なぜか?


取り締まりの厳しくなったコロンビアに代わり、今度はペルーやボリビアの農民たちがコカ栽培を請け負うようになったからである。イタチごっこだ。

コカイン取引では毎年60億ドルの儲けが生まれる。そのうち45億はアメリカのマフィア、14億がメキシコなど中継地のマフィアが握り、コロンビアの取り分はわずか1億ドルに過ぎない。経費を差し引けば農民の手元にはほとんど残らないのである。結局、コカインで一番儲かるのもアメリカなのだ。

貧困という社会問題を解決しない限り、コカ栽培に手を出す農民は後を絶たない。だが当局は除草剤を買う金は出しても、農民たちの生活向上に金を出す気はないようである。一体誰のための何のための麻薬対策なのか?要するに軍需産業が儲けたいという意図がミエミエだ。やるせなくなってくる。


コロンビア政府と左翼ゲリラが和平交渉を続けている間にも、コロンビアから暴力が減ることはなかった。

政府が交渉を続ける一方で、軍はゲリラに対する攻撃を続けていた。ゲリラ支配地への無差別爆撃で女子供が犠牲になっても軍は「テロリストの仕業」と発表し、軍による空爆ではなくゲリラの爆破テロの犠牲者であるかのように見せかける偽装工作を行なった。

AUCは農民虐殺を繰り返し、ゲリラ支持者へのテロを続けた。ゲリラに食事を提供したというだけで一村の住民が丸ごと皆殺しにされたこともある。

FARCはコカレーロス(コカ栽培農民)に3~5割の税を課し、その徴税によって多額の資金を得た。コカ栽培に応じなかったり、納税を拒否した農民は殺された。またAUCへの関与を疑われた農民も暗殺対象となった。

ELNは停戦を拒否し、石油パイプラインの爆破を繰り返した。ある村では爆破によって流れ出た石油に引火し100人以上の村人が焼け死んだ。

FARCは独自の法律を制定し、「富裕税」なるものを設けた。所得が100万ドル以上の者に対して10%を課税したのである。FARCに税を支払わない者は誘拐され、ある女性は首に爆弾を巻きつけられ生きたまま爆殺された。

何度も言うようだが、いつの時代、どこの国でも一番泣きを見るのは無力な庶民である。政府軍に殺され、AUCに殺され、FARCやELNにも殺され、もうコロンビアの農民たちは殺されるために生まれてきたようなものだ。


和平交渉の成果が見られないまま時は流れていった。パストラーナ大統領は紛争の当事者双方に武器を置いて対話のテーブルに着くよう重ねて説得した。だが、コカイン取引といううま味を覚えてしまったFARCもAUCも互いに停戦に応じる気はなかった。

FARCに対する評価はまちまちである。「単なる盗賊に成り下がった」というものから「コロンビアの底辺の人民のために戦っている」という評価までさまざまだ。

だが、無差別テロをやるようになったらおしまいだ。かつてブラジルのテロリスト、カルロス・マリゲーラは、

「無差別テロは絶対にしてはいけない。それをやれば民衆を敵に回し、国家権力にたやすく鎮圧されてしまうだけだ」

と語った。無差別テロをやった組織は、たとえどんなに正当な主張や理由があっても、民衆の支持は得られず、権力に潰されてしまうだけなのである。

筆者(土屋)は共産主義者ではないし、テロリストでもないからFARCを支持する気にはなれない。どんなに取り繕ってもFARCは麻薬と誘拐に味を占めた人民の敵だ。

本当に必要なのは問題の根っこを解決するための努力ではないか。貧困をなくさない限り、ゲリラに走る者は後を絶たないし、暴力がなくなることもない。

ただゲリラを殺し、武力で抑えつければ、その反動は必ずテロという形ではね返ってくる。


2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件は、海を越えたコロンビアの情勢にも大きな影響をもたらした。

アメリカ政府はかねてからFARCをテロ組織とみなしていたが、これを機にコロンビア政府に対して「テロリストとの交渉をやめるよう」圧力を掛けたのである。

パウエル国務長官(当時)は「FARCは西半球で最も凶暴なテロ集団だ」と述べ、アフガニスタンでアルカイダとタリバンに対してやったように、米軍が介入して武力で壊滅させる考えがあることを表明した。

これに驚いたのが当のFARCである。FARCの「外務大臣」でありスポークスマンであるラウル・レイエスは声明を発表し、

「これまで政府との交渉を認められていたのに突然、テロ組織として糾弾されるのは腑に落ちない。エクアドルで木が切り倒されればFARCのせいだと言い、ぺルーで牛が一頭死んでいたらFARCのせいだという。ポストが赤いのも信号が青なのも我々のせいなのか?!」

などと怒りをぶちまけた。何でもかんでも悪いのはテロリストだ!と決め付けるアメリカの態度が気に食わなかったのだろう。


だが、年が明けて2002年を迎えると、コロンビア政府はFARCとの交渉を打ち切り、武力による解決をチラつかせ始めるようになる。

あれほど交渉に前向きだったパストラーナ大統領も「我々はFARCに交渉の意思がないと判断した」と述べ、それまで認めていた南部のDMZ(非武装地帯)からFARCが撤退することを求めてきたのである。

この政府の変心ぶりにFARCは慌てた。米軍が本格介入すればFARCに勝ち目はない。だがアメリカ政府もコロンビアへの武力介入は何としても避けたい、というのが本音だった。

かつてアメリカの社会学者が、

「コロンビアのゲリラはコロンビアの野となり山となり、すでに国土の一部を形成してしまっている」

と述べたように、コロンビアのゲリラは一筋縄ではいかない強敵である。もし米軍が本格介入した場合、アンデスやジャングルを背景としたゲリラ戦に苦しめられ、その被害はベトナムの比ではない。少なくとも40万の兵力が必要であり、しかもその半数は戦死することになるというのだから、さすがのアメリカもこれまで本格介入に踏み切る勇気がなかったのである。

アメリカはアフガン問題で手一杯だった。これからイラクを叩こうという時にコロンビアのことまで構っていられる余裕はない。そこでアメリカ政府は自軍の出血を抑えるためにコロンビア政府を動かしたのである。


2002年2月20日、南部のネイバからボゴタへ向かう国内線プロペラ機が4人組にハイジャックされ、非武装地帯近くのハイウェイに強制着陸させられた。

犯人グループは乗っていた和平交渉担当のホルヘ・エチェン・トゥルバイ上院議員を拉致し、逃走途中の橋を爆破して逃げ去った。

この事件が起こるやただちにパストラーナはFARCの犯行と断定。軍に非武装地帯の奪回作戦に入るよう命じた。

実はこの事件も軍によって仕組まれたとの説がある。確かにタイミングが良すぎる。和平交渉を潰すために軍が一芝居打ったとしても何らおかしくはない。

スクランブル発進した空軍機が200波にも及ぶ猛爆をかけ、陸軍の緊急展開部隊900人が非武装地帯に侵攻した。翌日にはFARCの首都だったサン・ビセンテ・デル・カグアンが陥落。FARC部隊は蹴散らされ、ジャングルに撤収した。

こうしてコロンビア政府は3年に及んだ和平交渉を全面的に打ち切り、ゲリラに対する強硬策へと方針転換したのである。

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