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Author:土屋正裕
画像は南米コロンビアの首都ボゴタ中心部のボリーバル広場。明星学苑卒。



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解放者~El Libertador~ 第6話

1819年2月26日、ボリーバルがコロンビア大統領に選任されて始まったヌエバ・グラナダ解放作戦(コロンビア独立戦争)は、同年8月10日に首都ボゴタを制圧して終結を見るまで、165日(5ヵ月と15日)にも及んだ。

ベネズエラ領内から2500名の将兵を率いて出発したボリーバルは、大河オリノコ川を遡り、ベネズエラ領アプーレ州クラビーチェに上陸後、アプーレとコロンビア領カサナーレのリャノ(湿地帯)を通過し、無数の支流を渡河し、急峻で長大なアンデス山脈を越える大長征を経て、7月にコロンビア中部の高原に達するまで、その移動距離はじつに1500キロにも達した。

その間、灼熱の大平原、毒虫や猛獣の潜む泥沼と濁流、標高4千メートルから5千メートルにも達する険阻なアンデスの山々という大自然の脅威と戦いながら、強大なスペイン帝国軍を撃破し、祖国と人民を解放し、自由と栄光のために不屈の闘志で戦い抜いた。

ボリーバルにとっては今日が昨日のようであり、昨日が今日のようでもあり、明日が明後日のようにも思える目まぐるしい変転の日々であった。

7月6日、アンデス山中の町ソーチャで部隊を建て直したとき、総勢3200名だった解放軍の兵士は1800名に減っていた。苦難に満ちた行軍の過程で、病死、凍死、餓死、逃亡、行方不明などで多くの将兵を失うとともに、物資を運搬する馬やロバも数多く失った。

ボリーバルのアンデス越えは、ハンニバル・バルカの「アルプス越え」と並ぶ世界史の偉業のひとつとされる。

第二次ポエニ戦争(紀元前218年~紀元前201年)で、カルタゴの名将ハンニバルが兵と象を率いてフランス側からアルプス山脈を越え、歩兵9万と騎兵1万2千の約半数を失いながらもイタリアに侵攻し、軍事的勝利を収めたことは、後年のボリーバルの輝かしい成功と共通するものがある。

1819年7月25日、パンタノ・デ・バルガスの沼において――

この日、ボリーバルとサンタンデールの軍勢は、コロンビア中部パイパ北方10キロに位置するパンタノ・デ・バルガスの沼沢地帯において、スペイン帝国軍と前哨戦の火蓋を切った。

黒い軍服姿のスペイン兵に対し、粗末な衣服に裸足の解放軍兵士はいかにも頼りなく見えた。

圧倒的に不利な状況の中、この戦いで最も素晴らしい働きぶりを見せたのは、ボリーバルが“頼みの綱”としていたフアン・ホセ・ロンドン大佐である。

ボリーバルは、この若き大佐にすべてを託していた。ロンドンを側に招き、ボリーバルは眼に火のような光を浮かべて言った。

「この戦いの勝利は君の腕ひとつにかかっている。困難を恐れるな。強さのないところに徳はなく、勇気のないところに栄光はないことを忘れるな!!」

息子を励ます父親のように、まだあどけなさの残るロンドンの小さな肩を抱きしめたボリーバルは、ロンドンが駿馬を駆って勢いよく敵陣に突撃していくのを見送った。

「後に続け!!」

解放軍の兵士たちが一筋の奔流となってスペイン軍陣営に斬り込んだ。たちまち猛烈な怒号と銃声、硝煙と土煙に一面が覆われ、友軍の姿が見えなくなった。

愛馬の手綱をしっかりと握り締め、祈るような気持ちで戦いの行方を見守るボリーバルとサンタンデール……。

一瞬の静寂が戦場を支配した。直後、

「突破したぞっ!!」

伝令の大音声が響いた。ボリーバルとサンタンデール、黄土色の砂塵に包まれた視界に目を凝らした。

そこに見えたものは、軍馬に蹴散らされ、サーベルで斬り払われ、銃剣で突かれ、恐怖に駆られて逃げ出す王党派の兵士たちの無様な姿であった。

「よし、我々も続けっ!!」

ボリーバルがすかさず命じた。サンタンデールが愛馬の横腹を軍靴の踵で蹴った。

6時間に及んだ戦闘は、解放軍の辛勝に終わった。この戦いで、ボリーバルは危うく命を落としかけている。

最大の功労者であるロンドン大佐は、戦闘が終わった時、全身に無数の傷を負い、満身創痍となって手当てを受けていた。

8月5日、標高2880メートルの高原にあるボヤカ県の県都トゥンハにたどり着いたボリーバルの一行は、市民から「解放者」として歓呼の声をもって迎えられた。

ここでボリーバルは最後の決戦に備え、食糧、馬、軍資金を調達するとともに、15歳から40歳までの志願兵1千名を得ることができたのである。

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